高電圧設計向けのPCBレイアウトについて計画する方法

投稿日 August 23, 2017
更新日 December 16, 2020

戸外でランニングをする2人の女性

 

 

以前、都市プランナーの友人とトレイルランニングをしていたことがあります。私が疲れてやる気を失くしてしまう前に少しでも長く走らせようと企んだ彼女は、街の区画整理や建設に関することについてあれこれ聞かせてくれました。地元の政治の裏話に興味をそそられた私は、走る辛さを忘れたものです。

友人は賛成しないでしょうが、高電圧PCB向けのレイアウトは複雑な都市計画にいくつかの類似点があります。高電圧PCBでは通常のPCB設計に関する検討事項に加え、最終製品の最高性能を確保し、寿命を迎えるまで保護するために、基板全体で電界強度を制御、最適化できるレイアウトが必要になります。

高電圧領域の分離

都市計画で区画地域を指定し、土地の用途を制限するのと同じように、設計者は高電圧回路をグループ化し、基板の他の部分への影響を最小限にしなければなりません。高電圧と低電圧の領域を分離することで、基板でのアーク放電のリスクを低減できます。

高電圧の領域を物理的に分離する方法の1つは、周辺にinsertを追加することです。基板のレイアウトを作成する際は、insertを配置した場所にルータ加工する長穴を配置します。長穴が実装できるかどうかや、長穴の許容差については、製造業者に確認する必要があります。

基板の中で最も電圧が高い領域の近くに長穴を配置すると、過電圧になる可能性が高くなります。Proto Expressは、度重なるアーク放電に耐え得るよう長穴を設計することを推奨しています。長穴の最小幅は、基板で想定される最高電圧で十分な保護を確保できるものでなければなりません。長穴のサイズに少しマージンを追加すれば、コロナ放電やアーク放電で長穴の縁が炭化しても、PCBは損傷を受けずにすみます。これが重要なのは、縁がアーク放電による損傷を受けるのに伴って、PCB材料の耐性が低下するからです。

長穴は、基板の他の機能やビアと同様に、製造中にルータ加工されます。これが完了すると不活性絶縁材が長穴に追加され、垂直の障壁が形成されます。電圧が低ければPCB材料を使用できるものの、電圧が高い場合はポリエステルやテフロンなどの材料を使用したほうがよいでしょう。insertはクリップや接着剤で固定できるほか、長穴やinsertを所定の場所にロックできる形状に設計することも可能です。

 

 

長いPCB上のコンポーネント

高電圧の領域を分離することは、基板全体の電圧を徐々に下げるために重要

 

 

基板全体の電圧を徐々に低減

電圧の高い領域を分離した後も、残りの部分を「区画分け」して電圧を徐々に下げられるようにしなければなりません。ここでは、メインの導体の周辺に低電圧で稼働する回路を配置することで、電界を再分離できます。電界強度が低い領域では、コロナ放電やアーク放電が発生する可能性が低くなります。

高電圧設計での電界の分離には、電圧浮動環や電界格子環も使用できます。これらの環は、設計で保護される高電圧源のAC/DCの特性に応じて、抵抗やコンデンサーと連動したり、終端として機能したりします。かなり高度な設計コンポーネントのため、使用を検討する場合は資料を詳しく確認することが推奨されます。

ノイズ源の分離

PCB設計に1つの普遍的なルールがあるとすれば、それは短いトレースを使用するか、ノイズ源を分離するかのいずれかでしょう。このルールは、高電圧PCBの設計にも当てはまります。騒々しい製造工場の隣には住みたくないのと同じように、基板での信号や電力ノイズを制御不能にはしたくありません。基板や絶縁材の寄生容量を利用して大きくなったノイズは、基板の極めて感度の高い領域にも簡単に伝搬します。

相互接続は最小限に

PCBでの相互接続は最小限にしなければなりません。相互接続をなるべく避けることで、設計で過渡が発生するリスクを低減できるほか、基板全体での高電圧の伝搬も最小限にできます。ノイズと同じく、予想以上に電圧が高い領域や過渡によって、感度の高いコンポーネントが損傷したり、性能が低下する場合があります。

 

 

PCB上のASICチップ

相互接続によって電界が基板で容易に伝搬するのは、避けるべき事態

 

 

デザインチェックの活用

完全なデザインルール チェッカーを備えるPCB設計ツールを使用しましょう。こうしたチェッカーは、あなたの基板の「都市プランナー」であり、設計や基板の実装全体のスペースや配置が仕様に沿っているかどうかをチェックしてくれます。ケーブル、コネクタ、コンポーネントはすべて、基板の性能に影響を及ぼす可能性があるとはいえ、高電圧製品の設計に誤りがあると、製品そのものやユーザーに特定のリスクがもたらされることになります。

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高電圧設計に関してご不明な点がある場合は、Altiumの専門家にお問い合わせください。


 

 

 

 

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