3DプリントされたPCBの試作によりPCB設計の事情がどのように変わっているか

投稿日 April 12, 2017
更新日 May 16, 2022

3Dプリンター

 

 

インクジェットプリンターと食品保存容器内のエッチング液を使って初めて基板の試作を作ったときのことを覚えていますか? プリント、アイロン転写、剥離、再プリント、アイロン転写、エッチング。これだけ時間をかけ、イライラしたのに、車に取り付けたラジオから聞こえてくるのは音楽よりもノイズばかりでした。お金と時間をかけて専門業者に試作を作成してもらっても、私の初めてのラジオから聞こえてきたホワイトノイズと同じくらいイライラする結果になる可能性があります。このラジオで使われていた技術はもはや時代遅れです。そして現在の試作作成技術も同じ道をたどる可能性があります。新しい3Dプリンターは、PCBの試作を革命的に改善するだけではなく、PCBの製造にも同じ改善をもたらします。

試作の将来

試作のできあがりを待つことが苦痛なのは当然です。テスト基板が届くまでの間に、試作を作成するための新しい手法を生み出せるかもしれません。幸い、誰かがすでに新しい手法を生み出してくれました。新しい3Dプリンターは、導電層をプリントするために、ナノ粒子技術を使ってインク内に金属を浮遊させます(私は化学者ではないのでその仕組みはわかりませんが)。通常の3Dプリンターと同様に、新しい3Dプリンターは、プラスチックやその他の素材のレイヤーをプリントして基板を形成することができます。3Dプリントは、設計プロセスを合理化し、機能的な試作を構築して、設計を最適化できます。コストも削減されます。

待ち時間の解消 - 試作になぜそれほど時間がかかるのかを説明することもできますが、私も含め誰もその理由には興味がないでしょう。興味があるのは、テストモデルをどれほど短時間で入手できるかです。3Dプリンターを使えば、試作は社内でその日のうちに作成できます。つまり、設計のモデル化とテストを同じ日に行うことができます。それを実感してください。新しいPCB設計ソフトウェアには、デジタルモデルの作成を可能にするシミュレーション機能が搭載されています。3Dプリンターを使えば、コンピューターモデルと同じくらいすばやく物理的なモデルを作成できます。

即日テスト - 読者の皆様が何を考えているかはわかります。おそらく、1日で試作を作成することはできても機能するわけがないとお考えでしょう。もちろんエラーには備えてください。新しい3Dプリンターは、導電層をプリントできるので、基板を実際にテストすることができます! これらの導電層は、エッチングされた銅箔と全く同じようには動作しません。導体をプリントするために3Dプリンターで使用されているインクの特性についての詳細をプリンターメーカーにお問い合わせください。

終わりのない繰り返し - 大学時代、私が履修していたクラスで、全ての学生が試験に落ちました。教授は、繰り返しが最適化につながるとおっしゃって、再試験を行いました。教授のひとりがおっしゃったこの言葉を聞いて、学生達は宿題の問題を繰り返し解いていました。短時間で繰り返して試作を作成できれば、新しいデザインができるとすぐにそのデザインをテストすることが可能です。

 

 

立方体形のPCBの画像

立方体表面に施された表面実装技術(SMT)をご覧ください

 

 

コスト削減 - さらに、現場外の経理担当者にとっての利点は、3Dプリントされた基板は低コストであるという点です。3Dプリントで試作を作成することは、お金を印刷することになります(恥ずかしながら、プリンターに関するブログで是非とも言いたかったジョークです)。

PCBの設計と製造の将来

3Dプリンターが複雑な形状の物体を見事にプリントする動画をご覧になったことがあると思います。そのような複雑な形状の内側にコンポーネントや配線を組み込めることを想像してみてください。実際通りの3D形状としてPCBを設計できることは、おそらく3Dプリントの最大の恩恵でしょう。上の写真の立方体から、実際に3DプリントしたPCBがどのような外観になるか想像できます。3Dプリントにより、設計者はより広い表面積、より優れた導体、小型化されたPCB、より優れた材料特性を実現できます。

より広い表面積 - PCBにどれほど多くのレイヤーを追加しようとしても、表面実装技術(SMT)では2層までです。この制限要因は、完全な3D設計によって取り除かれるでしょう。表面にコンポーネントを実装する代わりに、基板の内側のどこにでも組み込むことが可能になります。コンデンサー、抵抗、あるいはICすら組み込めることを想像してみてください。コンポーネントによっては、冷却目的で外側に実装する必要があるかもしれません。ですが、スタック構造のPCBとは異なり、最新のSMTでは、3DプリントされるPCBに6つの外表面を定義することができます。

汎用性の高い導体 - 3Dプリンターによる製造が可能になるとともに、ビアやフラット配線は過去のものになります。導体は、任意の形状や方向にプリントできるようになるでしょう。ピッチの細かいBGA(ball grid array)のブレークアウトのために必要なレイヤーの数を心配する必要はなくなります。事実上、無限のレイヤーと3Dの導体が、ファンアウトの戦略を単純化します。

PCBの小型化 - 上司からの「もっと小さく」という言葉にうんざりしていることと思います。PCBの小型化は、そのプレッシャーばかりが大きなる一方、作業は困難になります。3D設計により、これまでよりはるかにコンパクトな基板をさまざまな形状で作成できるようになるでしょう。

多様な材料特性 - 材料の長所も計り知れません。材料がインク内に浮遊する限り、プリントが可能です。基板の特定領域に 特定の回路基板を組み込むことができます。基板の任意の領域の導電率を簡単に操作できます。必要に応じて基板の任意の部分をフレキシブルまたはリジッドにした3Dプリントにより、リジッドフレキシブルの要件を簡単に満たすことが可能です。

3Dプリントは夜明けを迎えたばかりですが、3D設計ソフトウェアはすでに存在しています。数社の企業が、3Dの試作をレンダリングできるPCB設計ソフトウェアを導入しています。このデジタルシミュレーションは、3Dプリントが可能にするであろう真の3D設計への第1歩です。必ず、Altium Designerのような最先端のソフトウェアを選択してください。Altiumは、すでに最先端の3Dモデリング技術の開発を進めており、完全な3D設計に飛躍的に転換するときには確実にその準備が整っているでしょう。

エキサイティングなPCB設計の新たな未来についてのご質問は、Altiumの専門家にお問い合わせください。

 
 
 
 
 
 

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