回路基板レイアウトのための多層PCB設計に関するヒント

投稿日 November 7, 2017
更新日 November 9, 2020
回路基板レイアウトのための多層PCB設計に関するヒント

 

初めて何かをやるときは困難になるものです。ひな鳥は巣から外へ出されるのを喜ばないでしょうし、十代の若者は本物の初デートの前は不安で仕方ないでしょう。私も初めてのデートのときは怯えきっていました。とはいえ、その出来事は私の人生の中でとても素晴らしい時間になったので、最初の一歩を踏み出せたことに満足しています。

初めて多層PCBのレイアウトを設計する皆さんは、これとは違うけれど同じように重大な一歩を踏み出そうとされています。わからないことばかりで、ミスをしたらどうしようと不安を覚えていませんか? だとすれば心配はいりません。それは誰もが通る道ですし、役立つ情報がいくつもあります。この記事では、注意すべきライブラリー関連のいくつかの問題のほか、設計の開始に向けた一般的なガイドラインについてご紹介します。

目標を達成するためには、とにかくやってみないといけないときもあるでしょう。PCB設計者にとっては、初めての多層基板の設計がこれにあたります。設計を始めるために役立つ情報を見ていきましょう。
 

多層設計用のライブラリーの準備

多層PCBを設計する際は、まずCADライブラリーを確認しておきます。片面基板や両面基板の設計しか行ったことがない場合は、ライブラリーがマルチレイヤーに対応していないかもしれません。まずは次の3つを確認しておきましょう。

ネガティブプレーン層:多層PCBのレイアウトでの電源プレーンやGNDプレーンの作成には、多くの場合にネガ状の画像プレーン層が使用されます。一部のCADツールでは、ネガティブプレーン層のドリル穴用に、パッドやフットプリントの形状に組み込まれたクリアランスが必要になります。こうしたツールを使用する場合は、必ずパッドやフットプリントの形状に正しいネガ状のプレーンクリアランスを設定します。これを怠るとショートが発生することになります。

内層の信号層のパッド形状: デザインの中には、内層とは異なるパッド形状が外層で使用されるものもあります。たとえば、ピン1のパッドが、内層で通常使用される円形ではなく、視覚認識を考慮して四角形にされることが多々あります。ライブラリーがマルチレイヤーに設定されていない場合は、内層の信号層で必要なパッド形状を使用できない可能性があります。

製図の要素: レイアウトツールで製造図や実装図を作成する場合は、ライブラリーに保存されているさまざまなロゴ、テーブル、ビューを使用できるかもしれませんが、これらは多層基板用に変更する必要があります。

 

さまざまなPCBコンポーネントの3D画像

多層PCB設計用のライブラリ部品の準備

 

製造工場の要件を理解する

多層PCB設計には、片面基板や両面基板よりも大きな利点があります。つまり、スペースを節約して設計密度を上げられるだけでなく、シグナルインテグリティーの問題もさらに対応できます。重要なのは、設計を開始する前に製造工場と打ち合わせを行い、多層基板の製造要件を理解しておくことです。

こうした要件は、それぞれの製造工場が持つ基板技術のレベルによって変わってきます。特定のレイヤー数を超える基板に対応できない、または非常に小さなトレース幅やスペース幅の基板を製造できない工場もあるでしょう。こうした制限を超えると、製造コストが増大したり、基板が製造できなかったりする場合があります。

たとえば、ビアの種類について考えてみましょう。通常、製造工場は標準的なスルーホールビアには対応できるものの、ベリードビア、ブラインドビア、マイクロビアを使用する場合は事前に工場に確認しておいたほうがよいでしょう。前述のとおり、トレース幅や間隔、基板層の数や構成についても相談しておくべきです。こうした要素はすべて、回路基板が製造できるかどうかに影響を及ぼすため、設計を開始する前にしっかりと把握しておく必要があります。

 

多層PCB設計の3D画像

多層PCB設計

 

多層PCB設計に関するヒント

ライブラリーの準備が整い、製造工場への確認が終わったら、いよいよ多層PCB設計の開始です。多層基板についてご存知ないかもしれないヒントをまとめました。

  1. 隣接する信号層を違う方向に配線する: 2つ目と3つ目の層に隣接する信号層がある場合は、それぞれを横方向と縦方向に配線します。これは、側面のクロストークの発生を防止することに役立ちます。
  2. 電源とGNDプレーン層を使用する: これは、電源とGNDを均等に配分することに役立つだけでなく、シグナルインテグリティーの確保に有効なマイクロストリップ構造も構築できます。
  3. 内層の信号層のスルーホールパッドを縮小する: 製造工場がスルーホールの部品やビア向けの小さな内層パッドに対応しているかどうかを確認します。対応している場合は、パッドを縮小して配線チャンネルを増やします。

初めての多層PCBの設計は荷が重いかもしれません。初めての巣立ちや最初のデートほどは恐ろしくないかもしれませんが、当たらずといえども遠からずでしょう。皆さんが肩の荷を下ろしてうまくスタートを切るために、上記のヒントを役立てていただければ幸いです。

次のPCBのレイアウトに役立つもう1つのヒントは、アルティウムのCircuitStudioAltium Designerといった品質の高いPCB設計ソフトウェアを活用することです。Altium Designerの機能は、ライブラリーの部品の作成やレイヤー構造の管理、複雑な多層基板の配置や配線に役立ちます。

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