ヒートシンク設計の基本と原則の概要

投稿日 June 13, 2017
更新日 December 2, 2020

マザーボードのヒートシンク

 

 

私は、大学で楽器を演奏していましたが、先生はいつも「基本を大切に! 」と言っていました。そのため、何時間も続けて音階を練習し、ほとんど何も考えずに、音階やその変化形を演奏できるようになりました。電気エンジニアにとって、基本を、そして基本がどう成果物に影響するかを覚えておくことは、重要です。普通、私は、高レベルのシステムを用いて業務を行いますが、高度な用途に影響する簡単な原則を忘れがちです。熱管理とヒートシンクの場合、覚えておくべき主な3点は対流、伝導、放射です。これらの3つ基本が、フィンの配置や向き、熱伝導材料(TIM)、ヒートシンクの表面処理などに影響します。これら全てがどのようにかみ合うかを思い起こせば、ヒートシンク設計は簡単になるでしょう。

対流

先生からの別の金言に「音楽は自然に」というのがありました。これは、必ずしも対流に当てはまりません。基板では2種類の対流が利用できます。自然対流と強制対流です。自然対流は、空気を動かすのにファンや外部の力を利用しません。加熱具合が異なる流体に自然に発生する、対流によって起こります。この受動プロセスは電力を使用しませんが、冷却に少し時間がかかる場合もあります。強制対流はその逆で、空気を動かすのに外部の力を利用します。通常、この力に、ファンなどが使用されます。この方法では、外部の力に電力を供給する必要がありますが、代わりに、冷却は早くできます。興味深いことに、どちらの方法を選択するかが、ヒートシンク設計に影響します。

自然対流の場合、空気の動きを妨げないように、ヒートシンクとフィンを配置する必要があります。自然対流では流れが非常に弱く、多少でも妨げられると、冷却を大いに抑制します。ヒートシンクを置くとき、空気がフィンを通って平行に上昇できるよう、ヒートシンクの向きを決める必要があります。フィンを気流に垂直に置くのは、逆立ちして楽器を演奏しようとするようなものであり、うまくいきません。フィン自体も間隔を空けて配置する必要があります。フィン同士の間隔が狭いと、対流を妨げます。

強制対流を扱う場合、簡単な面と複雑な面の両方があります。気流は保証されていますが、気流の最適化だけが問題です。前述しましたが、フィンと平行に空気が通過するようにヒートシンクの向きを決めます。フィンの設計が、少し注意を要する点です。強制対流の主な問題点は、圧力低下と損失です。フィンが高すぎる、またはフィンの間隔が狭すぎる場合、ヒートシンクでの圧力低下が過度になり、損失の大きいシステムになります。完璧なフィンのサイズや配置を見つけたい場合、計算が必要です。

 

 

オーケストラ指揮者
オーケストラを指揮(conduct)するのと熱を伝導(conduct)するのとは、違います!

 

 

伝導

オーケストラでは、指揮者は指揮棒を使って指示を空中に出します。まるでラジオのアンテナのようです。回路での伝導は正反対です。伝導では、直接接触する物体同士の間で熱を伝えます。伝導に対処するときには、ヒートシンクの設置場所、その材料、ヒートシンクを基板に取り付けるのに使用するTIMについて考える必要があります。

ヒートシンクを配置することは重要です。冷却を最大化し、同時に使用スペースを最小化したいと考えます。実際、そもそもヒートシンクを使用する必要がなければ、恐らく一番うれしいでしょう。しかし、使用する必要があるのなら、適切に使用するのが最も良いでしょう。ヒートシンクに最適な場所は、強力な集積回路(IC)や複数の熱源から熱を集めるヒートスプレッダなど、ホットスポットです。

材料を選択するとき、考慮するべき主な要素が2つあります。重さと熱伝導率です。アルミニウムは、重量特性に優れており、熱伝導率も悪くありません。銅は、熱伝導率は優れていますが、基板には少し重いかもしれません。ヒートシンクが重すぎると、PCBに力がかかり、早く故障する原因になる場合があります。

最後になりますが、伝導ではTIMも重要です。優れたTIMなしでは、ヒートシンクは、唇のないチューバ奏者と同様、役に立たないかもしれません。幅広い選択肢があり、自分にはどれが適切か調査を行う必要があります。

 

 

ギターアンプ
最大限度まで出す!

 

 

放射

バンドのメンバーは全員、コンサート会場を満たすため、できるだけ音を出すように常に言われました。ただし、サクソフォンは除きます。普通でも音量が並外れて大きいので。同じように、ヒートシンクに、できるだけ多くの熱を放射させたいと考えます。放射を最大化するには、ヒートシンクの表面積と放射率を最大化する必要があります。

表面積が大きいほど、ヒートシンクが放射する量が多くなります。ただし、時には表面積が増えると対流損失が増える、ということを忘れないでください。したがって、最適なソリューションを見つけるには、表面積とシステム効率のバランスを取る必要があります。

放射率とは、表面が、どれほど効果的に熱を空気に伝えているかの尺度です。幸いにも、対流または伝導に影響を与えずに、放射率を最大化できます。ヒートシンクの外側を簡単に処理して、放射率を改善できます。表面処理は、ヒートシンクの熱伝導性に大きなプラス効果があるので、大いに推奨します。

コンサートで演奏していて基本を忘れた場合、音符を1つや2つ抜かすかもしれません。指揮者は、腹を立てるかもしれませんが、その程度のことです。基本が分からないままヒートシンクを選択すると、PCBが高温になり燃えだす場合があります。基板を冷却するために対流、伝導、放射を効果的に使用することが重要なのは、そのためです。

ヒートシンクを選んだ後、冷却する回路をレイアウトするのにサポートが必要な場合があります。CircuitStudioは、設計に役立つ多くの先進の機能を備えた、優れた設計ツールです。作業が非常に速く進み、楽器を手に取る時間さえできるかもしれません。

ヒートシンクについてのご質問は、Altiumの専門家までお問い合わせください。

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