PCB設計プロセスを容易にするモジュールの使い方

投稿日 March 10, 2017
更新日 November 18, 2020

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画像出典: Adobe Stockユーザーalexbrylovhk

 

ヨセミテへの初めての旅で、私はとんでもなく大変なことをしようとしていました。大きな山と無謀な計画。私はクラックにすっぽりと入り込んで身動きが取れなくなってしまいました。一晩の緊急野営の後、私のプロジェクトは終わりを告げられ、谷底に戻った私は征服できなかった山を見上げる羽目になりました。PCB設計でも、概念的な仕様を実際の設計に移す際に適切に計画を立てないと、空しく終わったこの登山のような結末になる可能性があります。同時に考慮すべき要素が多数あります。例えば、空間とパフォーマンスを最適化するため、主要コンポーネントをどの場所に配置するか、どのコンポーネントを最初に配置するかなどがあります。また、サブシステムをどこに収納するか、どの配置が結果的に最もきれいにトレースできるかなども検討する必要があります。このような最初の決定事項は、面倒な作業だったり、先送りされたり、ヨセミテ登山のように完全に最初からやり直しをする必要があったりする可能性があります。

 

設計者の障害物を打ち破るため、仮想コンポーネントにモジュール化することで設計の概念を容易にします。

 

 

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画像出典: FlickrユーザーUwe Hermann(CC BY 2.0)

 

山を分割する

 

登山者が山にアプローチする方法と同じように、PCB設計を管理可能な「ピッチ」に分割し、頂上に到達するまで各ピッチに個別に取り組みます。設計を開始するには、設計内に自己完結している部分やよく知っているインターフェイスがある部分を探します。それらの部分は、最終的には詳細に設計する必要がありますが、最初の段階では基板上に存在することを明らかにしておくだけで十分です。それらの部分が特定できたら、プレースホルダーを使って一時的に作業対象から外し、「ブラックボックス」として扱います。これにより、登山ルートを計画するように、全体像に焦点を絞り、後で各部分に戻って作業を進めることができます。設計にプレースホルダーを使用してレイアウトのセクションに優先順位をつけることを、一般に「設計のモジュール化」と呼びます。

 

モジュール化を検討する場合、設計で使用する実際のコンポーネントは、2つの理由でブラックボックスになります。

 

  1. それらのコンポーネントは、ピン配列および仕様で明確に定義されたインターフェイスを提供します。

 

  1. パフォーマンスは事前定義され、インターフェイスに固有であることがわかっています。この結果、それらがインターフェイスでどのように機能するかを定義する必要はなくなります。

 

アンペア、CPU、レギュレーターなどの内部のしくみを示す必要があるとしたら、プロジェクトがどれほど複雑になるか想像してみてください。極めて複雑になるはずです。 

 

プレースホルダーという考え方を拡大して設計プロセスを推し進めることが可能です。計画的に進んでいる場合、たいていは、設計をどのように管理可能なピッチに細分化するかを明らかにするための出発点があります。プロジェクトの関連ドキュメントを忘れていませんか? フローチャート、設計概要、ユーザードキュメントは、大局的な視点で設計の機能を表しているはずです。PCBのモジュラーレイアウト同様、それらのドキュメントも設計の全体像に焦点を絞っており、PCBレイアウトの初期段階のモジュール化のために有効な資料です。

 

それらのドキュメントがあるかどうかにかかわらず、設計概念が十分に簡素化されて完成するまで、次のステップを繰り返すことをお勧めします。

 

  • モジュール化できるサブシステムや機能グループを見つける
  • グループを構成しているコンポーネントを全て特定する
  • グループのインプットとアウトプット(インターフェイスなど)を特定する
  • グループおよびインターフェイスを表すブラックボックスを作成する
  • 設計で特定されたコンポーネントをブラックボックスに置き換える

 

モジュールが定義されたら、ブラックボックスを使用して回路図またはPCBの最初の設計を完成させ、モジュールの相互関係を把握します。設計全体の作成はかなり簡単なはずです。完了したら、各ブラックボックスの内容の設計を開始できます。同様にその中のサブシステムもモジュール化することができます。モジュール化は、どのレベルでも機能します。

 

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画像出典: FlickrユーザーSteve Marple(CC BY 2.0)
 

モジュール化のツールと技術

 

多くの設計用ソフトウェアには、設計をモジュール化する機能が搭載されています。これにより、チーム全員が最も簡単に理解できる任意の方法を使って、プロジェクト環境でモジュールを表すことができます。一般的には次のような方法を利用できます。

 

描画ツール

 

描画ツールを使って描画済みの図形を配置します。単純なボックスや、わかりやすくなるのであればより独自の形状を使用します。配線描画ツールを使用すると、設計の他の部分への接続を表すことができます。

 

カスタムコンポーネント

 

設計ソフトウェアによっては、コンポーネントライブラリに必要なコンポーネントがない場合、カスタムコンポーネントを定義できます。コンポーネントの電気特性を、動作している回路図に組み込めるほど正確に定義することもできます。

 

注釈

 

ブラックボックスを表すテキストを使用したり、図形に記述テキストを追加したりします。簡単な説明を記述すると、ブラックボックスの追加に関する考えをトラッキングする助けにもなります。注釈が該当する設計部分を矢印で示します。

 

必須作業リスト

 

ブラックボックスの内容の設計を忘れないよう、必須作業リストを作成します。必須作業項目はプロジェクトのどこからでも確認できるようにし、オーナーに割り当てられて分類され、完了後は「完了」とマークされます。

 

簡単仕上げ

 

ヨセミテでの初めての体験以降、よりよいルート計画が苦労を劇的に減らしてくれています。PCB設計も同じことです。うれしいことに、モジュール化に役立つプログラムもあります。Altium Designerは、設計のモジュール化をサポートし、進捗に合わせてトラッキングおよびレポートもしてくれます。このようにして、好ましくない状況から抜け出す方法を考える時間を減らし、すばらしい製品を設計するためにより多くの時間を費やせるようになります。

 

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