フレキシブル回路のコストドライバーの管理

Judy Warner
|  投稿日 March 19, 2018  |  更新日 May 22, 2020

 

Judy Warner:

Taraさんは、20年以上も基板製造業に携わってきました。フレキシブルおよびリジッドフレキシブル設計の進歩に貢献している要因は何だと思いますか?

 

Tara Dunn

設計をフレキシブルおよびリジッドフレキシブル技術に向かわせた主な要因は、スペースと重さとパッケージだと思います。私が見たところでは、フレキシブルおよびリジッドフレキシブル回路を既に使っている顧客の場合、新しい設計でフレキシブル回路を使用する割合は増えています。また、フレキシブル技術を使ったことがなく、導入の手引きを期待している顧客からリクエストされる頻度も増えています。全般に、電子機器はますます小さく軽くなっています。小型化していない電子機器の場合は、固定されたパッケージサイズ内で電子部品の密度と機能を増やし続けています。

 

Warner:

コストと信頼性を左右する要因の中で、設計者が認識すべき主な要因は何でしょうか?

 

Dunn:

材料、パネルの利用、技術です。これらは主に3つのコストドライバーになります。それに4つ目を加えたいと思います。それは、組み立て業者の能力を把握し、自分の設計が製造のスイートスポットに合致することを確認することです。最も一般的に在庫が確保されている材料を把握して使用すると、コストとリードタイムを抑えられます。最も一般的な材料は、1/2 ozまたは1 ozの銅箔と、1 milまたは2 milのポリイミドの組み合わせです。1/2 oz~2 ozの銅箔と1/2 mil~6 milのポリイミドで作られたラミネートではその他の多くの選択肢があります。特定の組み立て業者が在庫として確保している一般的な材料を把握すれば、通常と異なる材料を最低ロット仕入れる代金のための余計なコストを確実に避けられます。

 

フレキシブル回路は通常、独自の形状で設計されます。入れ子の部品の向きを逆にして製造パネルを最も有効に使用できるよう調整する場合の設計を思い出してください。フレキシブル回路の基材で最も一般的なパネルサイズは、12" x 18"と12" x 24"の2つがあります。どちらのサイズも、通常、クーポンおよび加工穴の全側面に1"の銅箔が必要です。複数の部品を、アレイの要件を定めないで配置した場合、製造業者は部品を入れ子にして基材を最大限使用します。アレイにした場合は、アレイによる材料の使用とそのアレイが製品パネルにどのように収まるかを留意します。 

 

また、設計の技術レベルが上がるので、組み立て業者と協力して、不要なコストがかかっていないことを確認します。例えば、フレキシブルな部分にメッキされたスルーホールがあるリジッドフレキシブル回路は完全に製造可能です。ただし、スタックアップのリジッド領域の外側のビアを移動すると、設計に加工作業とコストが追加されます。

 

設計の観点から信頼性に着目すると、細部に問題が潜んでいます。折り曲げ半径のガイドラインに注意し、パッドを固定するタイダウンを追加して浮かないようにします。ビアの位置は重要です。屈曲点または応力点の近くへの配置を避け、機械的に応力点を減らします。導体を、均一に、折り線に対して垂直方向に配線して、鋭角にならないようにします。  

 

Warner:

フレキシブルおよびリジッドフレキシブル設計の技術は、どのようにして習得したのですか? また、設計者はどこで、フレキシブル製品の設計、組み立て、実装の知識を深めたらいいと思いますか?

 

Tara Dunn headshot

OMNI PCB社長のTara Dunn氏

 

Dunn:

実のところ、おもしろい話があるのです。私は、電子機器業界に偶然入りました。フレキシブル回路について、なんとなくプリンターケーブルと関係しているとは思っていましたが、それ以外は何も知りませんでした。私は、この業界で、リジッド基板の技術を知るより先に、フレキシブル回路の組み立てと設計について学び始めました。そして、運がよいことに、この業界に入ってすぐ、フレキシブル回路を製造する実地経験の機会に恵まれました。フレキシブル回路の設計に携わる人たちにお勧めしたいのは、組み立て業者のところに出向いて、フレキシブル回路の材料の違いやそれらの材料を使った製造の課題を本当に理解することです。それから、経験豊富なフレキシブル回路設計者であっても、AltiumLiveイベント、IPCイベント、SMTAイベントなど、業界のカンファレンスに参加することも重要だと思います。技術は急速に進歩しており、フレキシブル回路の材料について知れば知るほど、設計に取り入れる機会も増えます。

 

Warner:

フレキシブル回路の組み立てができる業者を探す場合、有能な業者の特定に、どのような情報が役に立ちますか?

 

Dunn:

表面的なレベルでは、多くはリジッド回路の業者の場合と同じでしょう。品質保証制度の整備、設置されている機器と性能、証明書類などを確認することが重要です。フレキシブルおよびリジッドフレキシブルに限って言えば、重要な要因の1つとして、業者が組み立てているフレキシブルおよびリジッドフレキシブル回路の割合をチェックすることでしょう。フレキシブル回路の製造は、特殊な処理や対処が必要です。この専門的な技術の習得には時間がかかりますが、標準的な処理の一部になっている必要があります。業者が提供できる技術のレベルを評価し、自分が使おうと思っている技術とそのレベルが合致していることを確認するのも重要です。例えば、片面フレキシブル基板と両面フレキシブル基板を専門とする業者や、フレキシブルおよびリジッドフレキシブル基板のブラインド、埋め込み、マイクロビア技術を得意とする業者がいます。必ず、自分のニーズにぴったり合った業者を探してください。有能な業者を特定するための決定的な推奨事項は、応用エンジニアリングの実績と応答時間をチェックすることです。多くの場合、設計フェーズでは質問事項が生じます。技術に精通した回答を迅速に得ることは重要です。 

 

Warner:

有能なアセンブリパートナーを識別するのに同じようなアドバイスがありますか?

 

Dunn:

有能なアセンブリパートナーが有能な組み立て業者かどうかを識別する場合、重要な注意点は同じだと思います。何年か前は、フレキシブルおよびリジッドフレキシブル基板のアセンブリを行うアセンブリパートナーを探すのは大変でした。今はもっと一般的になっています。アセンブリパートナーの実績レベルを評価することを強くお勧めします。 

 

Warner:

フレキシブルおよびリジッドフレキシブル基板を扱う仕事で好きなところと嫌いなところを教えてください。

 

Dunn:

誰かが私に、実際のところ、フレキシブル設計の限界は想像力によって決まると言ったことがあります。私はそのことが頭から離れません。フレキシブルおよびリジッドフレキシブル基板の仕事で好きなところは、設計者と一緒に座ってフレキシブル回路のサンプルを詳しく調べているとき、それからおわかりいただけると思いますが、ピンときてパッケージ化の問題解決のアイディアが湧き出てきた、ひらめきの瞬間です。

 

フレキシブルおよびリジッドフレキシブル回路の設計で嫌いなことはわかりませんが、何かを選択しなければならないとき、それはリジッド基板で慣れている材料より予測しにくいため、最初の部品のテストが終わるまで設計の性能予測はより難しくなります。設計の組み立てが思ったより難しくなることもありますし、クラックを引き起こすフレキシブル基板への未知の圧力もあります。開発サイクルがリジッド基板より少し長くなる可能性もあります。そのプロセスを通じても、常に、問題を解決しながら学ぶことがあります。そしてその知識はその後の全ての設計に生かすことができます。

 

Warner:

フレキシブル設計に関してPCB設計者に1つだけ重要なアドバイスをするとしたら、何をアドバイスしますか?

 

Dunn:

それは簡単です。設計プロセスのできるだけ早い段階から組み立て業者と協力することです。例えば、各組み立て業者は、コストとリードタイムを抑えるために、設計者が自分のスタックアップに組み込みたい推奨材料を用意しようとします。その上、業界全体ではさまざまな組み立てが可能です。組み立て業者の能力を把握し、設計に際して業者と協力することは、可能な限り最も高収益の設計を実現します。組み立て業者は、日々フレキシブル基板を扱っています。その知識から学びましょう!

 

Warner:

ありがとうございました! お話のたびに得るものがあります。読者の方々はあなたの見識をよく理解してくれると思います。

 

Dunn:

どういたしまして! 時間を割いていただき、また関心をお寄せくださり、ありがとうございました。

筆者について

筆者について

Judy Warnerは、25年以上にわたりエレクトロニクス業界で彼女ならではの多様な役割を担ってきました。Mil/Aeroアプリケーションを中心に、PCB製造、RF、およびマイクロ波PCBおよび受託製造に携わった経験を持っています。 また、『Microwave Journal』、『PCB007 Magazine』、『PCB Design007』、『PCD&F』、『IEEE Microwave Magazine』などの業界出版物のライター、ブロガー、ジャーナリストとしても活動しており、PCEA (プリント回路工学協会) の理事も務めています。2017年、コミュニティー エンゲージメント担当ディレクターとしてAltiumに入社。OnTrackポッドキャストの管理とOnTrackニュースレターの作成に加え、Altiumの年次ユーザー カンファレンス「AltiumLive」を立ち上げました。世界中のPCB設計技術者にリソース、サポート、支持者を届けるという目的を達成すべく熱心に取り組んでいます。

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