PCB製造において避けるべき5つの要素

David Marrakchi
|  投稿日 February 21, 2017  |  更新日 March 10, 2021

Disgusted with the hateful five

 
最後のデザインレビューが完了し、必要な承認の署名をもらい、作業がほとんど完了した状況を想定してみます。コンポーネントが調達され、基板のレイアウトが完成しても、最大の課題がまだ残っています。設計の意図を製造部門へ正しく伝えなければ、設計にかけた何か月もの時間と、チームの労力は水泡に帰すことになります。

 

しかし、このような設計の後段階の処理は、どのような方針で行えばいいのでしょうか? 製造部門に必要なすべてのファイルを出力するためのツールは用意されています。しかし、デジタルの情報から物理的な品物への翻訳プロセスは、それほど簡単で明瞭なものではないのは明らかです。実際のところ、何か月もかけて完璧な基板レイアウトを作成しても、設計の意図を製造用ドキュメントで明確に伝達できなかったために、大きな失敗が引き起こされることも考えられます。

 

ドキュメント作成プロセスにおいて遵守するべき真理が1つあるとするなら、それは従来の常識を否定し、より多くの詳細を記載する方が、少ないよりも良いと考えることです。それでは、ほとんどのPCB設計者が一般にドキュメント作成プロセスで見過ごしている細かい詳細は何でしょうか? PCB製造業者から最も嫌われる5つの点の概要をここに示します。ドキュメント作成のプロセスにおいて、これらの点に留意すれば、設計が却下されることを防止できます。

#1 - PCBドキュメントの内容が不完全である

当然のことのようですが、PCBの設計プロセスや仕様を、製造業者が必要とする重要なファイルへ変換する作業は決して単純明快なものではありません。そして、製造業者へ送るドキュメントに1つの間違いがあっただけでも、製造業者で大きな混乱を招き、生産プロセス全体を停止させてしまう可能性があります。不完全な内容のPCBドキュメントが製造業者の手に渡ることを防ぐため、次のようないくつかのガイドラインを頭に留めてください。

 

  • 使用しているPCB設計ツールで、出力ドキュメントを手作業で生成する必要がある場合、出力するファイルに注意し、それらが単一のリポジトリ内で整理されていることを確認します。
  • 製造業者に製造用のファイルを送付する前に、製造業者がどのようなファイルを、どのフォーマット(Gerber、ODB++、その他)で要求しているのかを正確に確認しておきます。
  • 単一の社内用CADファイルを製造業者に送り付け、そのファイルを読み取れるソフトウェアを相手が持っていることに期待してはいけません。

 

簡単に言うと、完全なPCBドキュメントパッケージには、製造業者に必要なすべてのファイルが、推定作業の必要なしに簡単に解釈できるようなファイル形式と構造で、整理されて含まれている必要があります。製造業者に冗長なファイルや、エラーの含まれているファイルが渡った場合、製造プロセスの遅延を引き起こすことになり、是非とも回避すべき事態です。

完全なドキュメントデータパッケージ(出力ジョブファイル)

完全なドキュメントデータパッケージ(出力ジョブファイル)

 

#2 - クラスの種類が示されていない

クラス2はPCBドキュメントの業界標準ですが、もし別のクラス(1または3)で設計を行った場合、マスター図面は大幅に変化します。このため、次のガイドラインに従って、正確にどのクラスが使用されているのかを明確にすることが重要です。

 

  • 製造業者が、標準のクラス2プロセスが必要なものと想定しないよう、PCB製造および組み立て図面の両方に、必要なクラスで推奨される構築標準を明確に示しておくことをお勧めします。
  • 特定のコンポーネントについて別のプロセスを推奨する場合は、組み立て図面で指定されているものとは別の取り扱いが必要なことを示す必要があります(例: クラス2のアセンブリに、クラス3の穴埋め要件が適用される場合)。

 

クラスの要件を図面のパッケージに記載することで、PCBが正しく処理されることを保証できるだけでなく、技術レビュープロセスでも役立ちます。この重要な情報により、製造業者は可能な限り正確な見積もりを提供できるようになり、基板の製造も正しく行えるようになります。 

 

PCB図面に付記されたクラスの種類についての注記

PCB図面に付記されたクラスの種類についての注記

 

#3 - はんだ付け仕様が欠けている

従来、多くの製造業者はPCBが鉛フリーの必要があるかどうかをそれほど重視していませんでした。しかし、2004年から状況が変化し、RoHS(有害物資規制)の導入により、PCB製造業者は各種のはんだ付けとフラックスの組み合わせをサポートする必要に迫られるようになりました。設計のRoHS要件を正しくドキュメント化するため従うべきガイドラインを次に示します。

 

  • RoHSの対象となる各国へ該当する電子製品を販売するすべての企業は、この指示に従い、ドキュメントの注記としてコンプライアンスを明記する必要があります。
  • 現在では、RoHSは例外的なものではなく、標準化していますが、RoHS仕様が必要ではない場所は、ドキュメントパッケージで非RoHSの識別子を使用して示すことが重要です。

 

好まざるかどうかにかかわらず、RoHS準拠は今後も必要とされるでしょう。競合上の優位性を得るため、基板の製造が遅延しないように、PCBのドキュメントではRoHSまたは非RoHSの固有の識別子を常に正しく記載する必要があります。

 

PCB図面におけるアセンブリ/ベアボードの仕上げの注記

PCB図面におけるアセンブリ/ベアボードの仕上げの注記

 

#4 - ITAR要件が存在しない

#4を理解するためには、多少の事実について説明する必要があります。IPCの調査により、防衛産業向けに製造されるPCBの約1/3は海外で製造されていることが判明しています。簡単に言うと、設計を海外に送り、米国外の人員が扱うことにより発生する財務的および法的な問題を真剣に考慮し、十分に文書化する必要があります。ITAR(武器国際取引に関する規制)の要件を文書化するとき念頭に置くべきガイドラインを、次に示します。

 

  • PCB設計業界のサプライチェーンにおいて、ますます海外調達が増えるにつれ、エンジニアはデータパッケージが正しく処理されることを保証するため、ドキュメントにITAR要件を明記することが必要になりました。
  • ITAR要件が正しい場所に記載されていることを確認します。一部の製造業者は、製造および組み立て図面ではなく、購買注文でITAR仕様を受け取ります。

 

ITAR要件を注意深く文書化することで、機密性のITARデータの取り扱いを誤るリスクから、自社と製造業者の両方を保護することができます。そして、このような問題について上司に報告する羽目になることはぜひとも回避すべきです。

 

PCB図面のITAR準拠についての注記

PCB図面のITAR準拠についての注記

 

#5 - レイヤーシーケンスが欠けている

最後に重要な点として、レイヤーシーケンスが欠けている場合があります。レイヤーのスタックアップに固有の配置は、電子回路設計の重要な要素です。特に、高速なデジタル設計で、インピーダンスの一致する転送ラインが必要な場合は、重要性が高くなります。レイヤーシーケンスをドキュメント化するとき注意すべき、いくつかのガイドラインを次に示します。

 

  • 銅パターンの画像にレイヤー番号を記載し、各レイヤーに論理番号を設定します(上から順に、最上位レイヤーは1、内層1は2、内層2は3など)。この指定方法を使用する場合、番号が重ならないよう位置を設定してください。
  • 組み立ておよび製造図面に、明確なスタックアップ図面を含め、すべての銅のレイヤー、はんだマスク、オーバーレイレイヤー、その他の追加レイヤーを正しい順序で含め、対応する正しいデータファイル名を指定します。
  • 各レイヤーファイルには、正しい順序を明確に示すような名前を付けます(例: Top、Mid1、Mid2、…、Bottom)。

 

設計者がドキュメントにレイヤーシーケンスを含めることを忘れた場合、基板やレジンが正しく機能せず、不愉快な結果を招くことになります。上のガイドラインにより、設計の意図を製造業者へ正しく伝えることができ、このような問題を避けることができます。

ガーバーファイル名を含む、理想的なPCB図面レイヤースタックアップの凡例

ガーバーファイル名を含む、理想的なPCB図面レイヤースタックアップの凡例

 

け結果要約の

これが、設計者のドキュメントパッケージに含まれていた場合に製造業者から最も嫌われる5つの要素です。これらは、ドキュメントに含める必要がある、あらゆるガイドラインや仕様のうち、ごく一部に過ぎません。しかし、上記の内容を自分の個人用ベストプラクティスに含めることで、エラー、誤解釈、ファイル欠損による製造遅延の最小化に向けて大きな進展が得られるでしょう。これらのドキュメントに関する問題のいくつかを解決するための手引として、Draftmanをご覧ください

 

製造に関する推奨事項や禁止事項について独自の方針をお持ちなら、下のコメントにご意見をお寄せください。

 

 

筆者について

筆者について

Davidは現在、Altiumのシニアテクニカルマーケティングエンジニアを務め、すべての Altium製品のテクニカルマーケティング資料の開発管理を担当しています。また、ブランディング、ポジショニング、メッセージングなどの製品戦略を定義するために、マーケティング、セールス、カスタマーサポートの各チームと緊密に連携しています。Davidは、EDA業界での15年以上の経験をチームにもたらし、コロラド州立大学でMBAを取得し、Devry Technical Instituteで電子工学の理学士号を取得しています。

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